今回は、走っている時に左の股関節が抜けるような感覚があるので、「股関節インピンジメント」について調べました。
勉強した論文はこちら↓
『股関節インピンジメントの患者に対するトレーニングの留意点(Training Considerations for Individuals With Femoral Acetabular Impingement)』Morey J. Kolberら
勉強したことをまとめる感じになりますので、今回はちょっと長めになってしまいました( ゚д゚)
内容的に難しいことがずらずら書いてあるので、一番下にまとめて書いてあります。わからん!って方は目次から飛んでください👇
マラソンをする方でも、股関節に痛みが出る方が多いと思うのでぜひ参考にしていただければ幸いです☺️
股関節インピンジメント
股関節インピンジメント(FAI:Femoral Acetabular Impingement)
寛骨臼と大腿骨近位部の異常な異常な接触によって、痛みや機能障害を生じる疾患です。多くみられる症例は、大腿骨頭部または寛骨臼縁の形態異常に起因します。
主な症状は、股関節が引っかかる感覚、鼠径部(前側足の付け根)や大腿の外側に痛みが出る、長時間の歩行運動時に痛みが出るなどが特徴です。
私の場合は、関節の部分に痛みが出るのではなく、太ももの外(だいたい大転子)のあたりに違和感(抜けるような感覚)と痛み、あとはダッシュする時や水泳のキックを打つときなどに鼠径部に痛みが出てきます。
(大転子は大腿骨の一部だから「抜ける」っていう感じの表現はいかがなものか…と思ったんですが、走っている時に支持足の方の踏ん張りが聞かなくて「骨が外に動くような感じ」がするので、「抜ける」と表現しました。臀筋郡の筋力不足ゥ…)
股関節インピンジメント(以下FAI)は3つのタイプに分類されます。
①カムタイプ
大腿骨頭の形態異常です。
大腿骨側の骨が変形してることで、股関節の内転や内旋(足を組んだりする動作)、股関節の屈曲角度が大きい姿勢(ディープスクワットなど)をとると、関節唇や寛骨臼縁と衝突してしまいます。
主に若い男性、アスリートに多くみられます。
②ピンサータイプ
寛骨臼縁の形態異常です。
「被覆過剰」と呼ばれており、寛骨臼縁の上前方が突き出してきます。
寛骨臼の形態異常部分を大腿骨近位部との間にほとんど隙間がないので、ディープスクワット(90°以上)を行う時、股関節の内転動作が入ってしまうとインピンジメントが起こってしまいます。
中年の女性に多くみられます。
③混合タイプ
カムとピンサー両方の形態異常がみられるタイプです。
混合タイプのインピンジメントは若い男性に多くみられます。
ここまで形態的な変化をみてきましたが、インピンジメントは異常な動作パターンでも構造的な変化が出てきます。
例えば、スクワット種目では膝が内側に入るという女性に多くみられるエラー動作があります。この動作は、股関節の内転と内旋が入っているのでインピンジメントを誘発しやすい動きになります。
また、体操競技やバレエなどの極度の可動域を要求する競技でもFAIを誘発しやすくなっています。
股関節インピンジメントになりやすい姿勢
FAIの増悪因子となりやすい股関節の姿勢
「脊柱弯曲姿勢」または「顕著な骨盤前傾」
・「脊柱湾曲姿勢」の場合は、腰椎前弯が増大し、骨盤の位置はニュートラルで股関節が伸展している状態です。(胸椎が後弯して腰椎が前弯、股関節の伸展に大して骨盤がやや前に出ている)
この姿勢では重心線が股関節の後方へ移動するので、臀筋群の非活動性萎縮や筋力低下を招きます。つまり、ランニングなどの動作中に下肢のアライメント制御ができないので、股関節の内転や内旋などのインピンジメントを誘発させる動作に繋がってしまします。
FAIの患者は症状がない人に比べると、股関節の外転筋が約22%、外旋筋が約18%弱いという結果が出ています。
臀筋群の筋力と筋持久力の向上、維持がFAIの改善に必要となります。
・脊柱前弯を伴って「骨盤が前傾」している場合は、股関節の軽い屈曲によって大腿骨頸部と寛骨臼の上前部がぶつかってしまうということです。
骨盤が前に回旋しているので、寛骨臼の後捻が大きくなってしまいます。
そのため、骨盤前傾姿勢でディープスクワットなどの股関節屈曲動作を行うと、正常な股関節でもインピンジメントを起こしてしまいます。
FAIの患者は、股関節の可動域が収縮してしまい、身体を動かしている時の痛みが大きいので総合的な運動パフォーマンスも低下している場合があります。
酷い猫背や骨盤前傾になっていないか、座る時に足を組んだりあぐらをかくなどの股関節内転内旋動作をしていないかなど、自分の姿勢を確認してみてください。
修正エクササイズ
FAIの症状を進行させないように股関節に痛みの生じる姿勢を避けてエクササイズのフォームを修正していきます。
レジスタンストレーニング
トレーニングを行うメリットとしては股関節を動かす時に必要な「下肢アライメントを制御する能力の向上」、「インピンジメントを誘発する姿勢を回避すること」にあります。
股関節の外旋筋、外転筋、伸展筋の筋力強化によって、スクワットやランニング、ジャンプ動作での下肢アライメントと姿勢の改善(内転や内旋の回避)につながります。
崩れた姿勢によって、臀部の筋群の筋力が低下している場合が多いため、まずは中臀筋と大臀筋の非荷重のオープンキネティックチェーンエクササイズから始めます。
・プローンヒップエクステンション
・サイドライイングアブダクションwithエクスターナルローテーション
・クラムシェル
クラムシェルは、太腿の間にタオルを丸めて挟むことによって、股関節の内転と内旋を軽減できます。(私も普通にやると足を閉じる時に嫌な感じがしたんですが、タオルを挟んでからは違和感なくなりました)
ある程度の筋力がついてきたら、機能的動作につながるクローズドキネティックチェーンエクササイズも組み込んでいきます。
・スクワット
・レッグプレス
・ランジ
など、スクワット系の動作が多いので、内転と内旋が起こりやすいエクササイズが多いです。
なので、スクワットを行う時はあらかじめ股関節の外転、外旋を意識させる+股関節の屈曲を45°に制限することで、大腿骨と寛骨臼のインピンジメントを減らすことができます。
もう一つ大事なのは、腰椎をニュートラルに保って自然な姿勢をキープすることです。
スクワットやランジなど、インピンジメントの症状が出やすい時に、グルートスクイーズ(大臀筋の収縮)を行うことによって、下肢アライメントの制御を向上させて筋活動の収縮ラインによる脊柱前弯を減少させることができます。
まとめ
・股関節インピンジメントの進行を止めるには、トレーニングや体の使い方の修正と、インピンジメントを誘発する姿勢を避ける。
・ディープスクワットや梨状筋のストレッチなどの、股関節の屈曲、内転、外転の動作を避ける。
・長時間の座位、Wシッティング、足を組んで座る、あぐらをかくなどの機能的動作を避ける。
・過度の脊柱前弯や骨盤前傾姿勢は、股関節のインピンジメントを誘発するので、臀筋の筋力強化や姿勢矯正エクササイズを行う必要がある。
ということでした!
この論文は2017年の11月号のNSCAジャーナルに掲載されているので、比較的読みやすいです。これからもっと勉強して英語の論文も理解できるように頑張ります☺️